現代語訳
論語と算盤
訳:守屋淳
820円(税別)
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渋沢栄一の物語です。
渋沢栄一は“道徳と経済を調和させるべき“と説き、今日の日本経済の礎を築いた人物です。
大河ドラマの主人公が発表された当初、そんな地味な作品、ヒットするはずがない!なんて言葉を耳にしましたが、キャストを見るとどうやらイケメン大河になる様子。
女性視聴者の獲得も出来るのでは・・・??という様相になっているようです。
残念乍ら、我が家にはTVがないので大河ドラマを視聴する事は出来ません。
と言うことで、渋沢栄一の「論語と算盤」現代語訳版を読んでみました。
(本文より抜粋)
『国の富をなす根源は何かと言えば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ。そうでなければ、その富は完全に永続することが出来ない。』
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巻末には渋沢栄一小伝と称し、渋沢栄一の一生が記されています。
『論語と算盤』だけではないので、読後、得した気分になります。
時代が「尊皇攘夷」「文明開化」「明治維新」「殖産興業」と激しく変わる時期だったこともあり、想像以上に波瀾万丈な人生です。
小伝を読む限り、大河ドラマは決して地味なものではなく、面白い物語になるのではないでしょうか。
特に若い頃は何度もターニングポイントとなる出会いや選択があります。
大河ドラマでは描かれないと思いますが・・・。
渋沢栄一の私生活は決して聖人君子というわけではない、ということも知る事が出来、ニヤリとしてしまいます。
とんでもないバイタリティをお持ちの男性です。
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内閣総理大臣を輩出していない埼玉県。
埼玉県の県民性でしょうか。
良い方々が沢山いる印象があります。
埼玉県民に悪い人はいない!(ハズ)。
渋沢栄一もその一人。
自身の私利私欲に走るのではなく、国の繁栄の為に力を尽くした方です。
渋沢栄一が私利私欲の為に財閥を築いていたら、日本の経済は現在とは全く違うものになっていたのではないか?とも言われています。
余談になりますが、埼玉県の小学生たちはさいたま郷土かるたを通して、さいたまの偉人、歴史、産業、自然などを遊びながら学びます。
渋沢栄一も登場します。
埼玉県のさいたま郷土かるたより
“日本の 産業育てた 渋沢翁“
渋沢栄一は今までどなたですか?という感じだったと思いますが、この大河ドラマを通して全国に知れ渡ると良いですね。
出身地は血洗島。
名前の由来は複数あり、昔合戦が行われた場だとか言われています。
古語が残っていると言う説が良いと思います。
その後何かしらの戦いがあり、字を当てたのかな、とも推測します。
百姓と言っても、豪農出身です。
水呑み百姓とは比べものにならない教育を受けています。
教育って本当に大事だと改めて感じました。
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足利学校を訪れた時に、儒教はなぜ学ばれなくなっていったのだろう・・・、儒教はなぜ良くないところがあるのだろう・・・と思ったのですが、今回の『論語と算盤』を読んで何となく分かったような気がします。
渋沢栄一が語るように、何事も行き過ぎは良くないのだと思います。
儒教の解釈を間違え、時代と合わない事が多くなり、儒教中心にすると世の中が上手く回らなくなっていったのではないかな?と思います。
NHK大河ドラマでは論語ではなく“道徳と経済を調和させるべき“と紹介しています。
時代が変化しても、道徳として守らなければならないものは変わらないようです。
論語にはそのような道徳としての教えが書かれているのだと思います。
渋沢栄一も論語の解釈を間違えてはいけない、と通論の補足説明をしながら、分かりやすく論語の教えを説いています。
渋沢栄一も以下のように語っています(本文より抜粋します)
『仁や義といった、社会主義のための重要な道徳を考えてみると、東洋人の考えは古今であまり変化がないように思われる。これは西洋の数千前の学者や、聖人や賢人と呼ばれている人の考え方を見ても、まったく同じなのだ。今日、理学や化学がいかに進歩して、モノに対する知識が豊かになったとしてもこの根本の点については変わらない。
結局、道徳の根本に関していうなら、昔の聖人や賢人の説いた道徳というものは、科学の進歩によって物事が変化するようには、おそらく変化しないに違いないと思うのである』
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『論語と算盤』を読んで、最近読んだ本やオンラインセミナー等と共通する事が沢山語られていると感じました。
例えば先日読んだ本にも「美意識」を鍛えるとともに、「倫理観」といったものも大事だと書いてありました。
科学や機械の発展は大きく変化していますが、リーダーシップに関しては進化が見られません。
時代とともに求められるリーダー像が変化していると言うこともあるでしょうし、リーダーとは次世代に引き継がれ進化していくものではない、と言う事もあるでしょう。
私利私欲に走ると歪みが出て、正しい判断が出来なくなります。
大人になったら世の中は良くなると思っていましたが、複雑化するばかり。
生活は豊かになっているはずなのに、精神的な余裕や環境は悪くなってしまったのではないか?と思う事もあります。
子どもの頃はどうして正しい判断が出来ないんだろう?と思っていました。
大人になるにつれ、正しい選択、正しい判断が出来ない状況に追い込まれたり、何も考えないもしくは考える事を放棄していたり、自分の利益の事のみで行動する人がいたり・・・と様々な状況が多数あるのだと気づき始めました。
ひとりひとりが道徳を大切にし、生きやすい世の中をつくっていく事が必要なのでしょう。
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渋沢栄一は非常に柔軟な考えを持った方だと思います。
競争も必要ですし、学ぶことは一生必要な事だと語っています。
印象に残った言葉をいくつか抜粋します。
・『人が世の中を渡っていくためには、成り行きを広く眺めつつ、気長にチャンスが来るのを待つということも、決して忘れてはいけない心がけである。』
・『その人が活動する天地は、自由なものでなければならない』
・『結局、世の中は持ちつ持たれつなもの。自分も驕らないようにし、相手も侮らず、お互いに信頼しあって隙間風の吹かないようにとわたしは努めている』
・『何事も誠実さを基準とする』
・『身近な例で考えても、自分さえよければいいという考え方が結局自分の利益にならないのは(中略)わかると思う。』
・『(中略)現代において自分を磨くということは、現実のなかでの努力と勤勉によって、知恵や道徳を完璧にしていくことなのだ。(中略)しかもそれは自分一人のためばかりでなく、一村一町、大は国家の興隆に貢献するものでなくてはならない。』
・『信用こそすべてのもと。わずか一つの信用も、その力はすべてに匹敵する』
・『とにかく人は、誠実にひたすら努力し、自分の運命を開いていくのがよい。(中略)一時の成功や失敗は、長い人生や、価値の多い生涯における、泡のようなものなのだ。(中略)成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる』
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92歳まで生きた渋沢栄一。
経験談からの言葉には重みがあります。
先が読めない今、渋沢栄一の生き方、考え方は1つの道しるべになるのではないでしょうか。
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昨晩は大きな地震がありました。
東北地方では停電や落下物があり、けがをされた方も多くいらっしゃるようです。
大きな災害が起きない事を祈ります。
一昨日のブログで登場した「なすび」さん、現在は福島にいらっしゃるのですね。
ネットのニュースになっていて、久しぶりにお姿を拝見しました。
柳美里さんもニュースになっていました。
まだ寒い日が続きますし、体調を崩さないように過ごしていただきたいです。
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皆様の明日も良い一日になりますように!!