幸せ感じる☆日々の暮らし

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【308】一度きりの大泉の話(読書感想文84)

一度きりの大泉の話

萩尾望都

河出書房

1980円(税込)

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・・・想像していた話とは全然違っていました。

 

☆☆☆☆☆

萩尾望都さんは漫画家です。

 

代表的な作品は『ポーの一族』『トーマの心臓』『11人いる!』等。

 

SF作品も多いです。

 

中学生の頃、高河ゆんさんの漫画が好きな友人がおり、高河ゆんさんから萩尾望都さんを知りました。

高河ゆんさんが初めて買ったコミックスが萩尾望都さんの『ポーの一族』でした)

 

 

しかし当時は萩尾望都・・・??という感じでした。

 

萩尾望都さんの作品を読んだのは大学生になってからです。

 

友人が『残酷な神が支配する』を読んでおり(虐待、同性愛、未成年売春、ドラッグなど社会的な問題がベースとなっているお話)・・・何話か読んだのですが、過酷な世界感について行けず、もっぱらSF作品ばかりを読んでいました。

 

銀の三角』は繰り返し読んだ作品です。

複雑で難解と言われる一冊で、何度も繰り返し読みました。

(「賢治の幻燈」という音楽を聴きながら読んでいたので、萩尾望都というと宮沢賢治のイメージとリンクします。

萩尾望都さんは宮沢賢治がお好きと本書にかかれていて、ちょっと嬉しくなりました)。

 

綺麗な絵で、ふわふわとしてつかみ所のない、不思議な雰囲気の作品が多いです。

 

漫画というより、文学作品を読んだよう。

余韻を残す作品が多いです。

 

☆☆☆☆☆

本書は書店に平積みになっていたので購入しました。

想像と全く異なる内容の本でした。

 

一気に読みました。

読後心が重くなり、悲しい気持ちになる本でした。

 

改めて(作品からも感じ取る事が出来ますが)、萩尾望都さんは個人としてもとても繊細な方なのだなぁ・・・と思いました。

 

☆☆☆☆☆

【過去記事後ネタバレアリ】

 

2016年に竹宮惠子さんの著書で『少年の名はジルベール』という本が出版されています。

 

竹宮惠子さんの作品は読んだ事がないのですが、「ジルベール」は聞いた事があります。

 

よしながふみさんの『きのう何食べた?』にジルベール(と呼ばれる青年)が登場します。

(最新巻ではジルベールも少し年を重ねていました・・・。)

 

本書でもこの『きのう何食べた?』とジルベールの話が登場します。

萩尾望都さんも読んでいらっしゃるのですね!!

manana55.hatenablog.com

 

本書は若かりし頃の竹宮惠子さんと萩尾望都さんの仲違いの話です。 

 

何て繊細!

若さ故の物語!!

 

・・・高校を卒業して、プロになって自身の力で身を立てると上京。

才能溢れる20歳前半の女の子たちの物語。

そりゃ純粋で繊細なお話になりますよねぇ・・・。

 

男女関係のもつれの話・・・になりそうなところですが、今回は違いました。

 

☆☆☆☆☆

「大泉の話」は楽しい青春物語ではなく、友情関係が崩れた、人間関係のもつれの話だったのでした。

 

竹宮惠子さんは『少年の名はジルベール』で萩尾望都さんへの嫉妬心から距離をおいたと記しているそうです。

(『少年の名はジルベール』を購入、読む予定はないので、本書に記載されていることと本のレビューから記載しています)

 

・・・なんて潔い告白!

 

当時萩尾望都さんよりも売れっ子だったという竹宮惠子さん。

周囲に気づかれる事はなかったのですが、萩尾望都さんの才能に嫉妬し、スランプに陥っていたと告白しています。

 

京都精華大学の学長も勤められています。

学長という事で政治的な側面も対応する事ができる、クレバーな女性なのだと思います。

 

年を重ね、冷静に当時の状況を見つめる事が出来るようになったのだと思います。

 

自身の失敗を反省を含め積極的に学生達に話しているそうです。

 

と言う事で、竹宮惠子さんは萩尾望都さんとの関係を修復したいと考えているようです。

萩尾望都さんの事もとても好意的に記しているそうです。

 

☆☆☆☆☆

大泉の話を少しします。

 

萩尾望都さんと竹宮惠子さんは若かりし頃、2年間大泉で一緒に生活し、創作に励んでいました。

 

萩尾さんの両親から上京を赦してもらうために、竹宮惠子さんから提案したそうです。

 

複数の部屋がある事から漫画家を志す者を中心に、若者が出入りするようになりました。

 

しかし、萩尾望都さんと竹宮惠子さんの友人関係が崩れ、それぞれ別の場所で生活をする事になりました。

 

当時の様子を一部で「大泉サロン」と呼んでいるそうです。

 

トキワ荘」になぞらえ、「大泉サロン」の話を盛り上げようという動きがメディア内で起きているそうです。

 

 2016年に竹宮惠子さんの本が出版されてから、メディアから取材をしたいとの電話が萩尾望都さんのもとに来るようになりました。

 

当時の話を含め関わりたくない、お願いだからそっとしておいて・・・という気持ちを込めて、萩尾望都さんは本書を出版しました。

 

☆☆☆☆☆ 

萩尾望都さんは今もなお竹宮惠子さんの作品は手に取らず、当時の傷を抱えたまま生きています。

 

・・・仕方ないですね・・・。

 

関係を修復するなんてとんでもないお話で・・・。

 

改めて感じ方はひとそれぞれなのだな・・・と思いました。

 

竹宮惠子さんもはっきり萩尾望都さんに伝えた訳ではなく、モヤモヤ・・・が残る曖昧な話し方で、気持ちを伝えました。

それでも萩尾望都さんはとても傷つき、身体にも表われる形で長い間ストレスを抱えました。

 

同じ内容でも伝え方で相手に与える印象は変わります。

 

・・・言葉は丁寧に選ぼう・・・と改めて感じました。

 

☆☆☆☆☆

1対1ならともかく、第三者が絡むと話がややこしくなります。

当時も第三者が介入した事により、話が複雑になってしまいました。

 

今回はお互いに出版という形で世に出しました。

 

これで世間一般に知られるようになりました。

果たしてこの形で良かったのか・・・。

 

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・・・そういう事ですか・・・。

萩尾望都さんの気持ちはそのままに。

しかし想いに反して、何年か、何十年かたったら映像化されそうな予感がします•••。

 

☆☆☆☆☆

本書の未収録スケッチは素敵な絵が沢山掲載されています。

 

改めて作品を読みたくなりました。

 

☆☆☆☆☆

皆さまの明日も良い一日になりますように!!