モンテレッジォ
小さな村の旅する本屋の物語
内田洋子
文春文庫
850円(税別)
書籍裏面の書籍案内より
“トスカーナ地方の山深いその村では、何世紀にもわたり本の行商で生計をたててきた。籠いっぱいの本を担いで国じゅうを旅し、「読む」ということを広めた。ー偶然の出会いに導かれ村人に消えゆく話を聞きながら、突き動かされたように書いた奇跡のノンフィクション。本と本屋の原点を書き、各紙誌で絶賛された読み継がれるべき1冊”
イタリア版の本屋大賞、露天商賞。
2020年、外国人で初めて“金の籠賞”を受賞した作品です。
作者の内田洋子さんはエッセイスト、マスメディアに向けて情報発信をされている方です。
☆☆☆☆☆
ノンフィクションです。
本好きの方には読んでいただきたい、お勧めの一冊です。
写真も沢山掲載されています。
人口が減少している山深い村、しかも冬、と聞くと薄暗い過疎の村を思い浮かべてしまうのですが、写真付きのおかげで冬の晴れた空の美しい村に修正して読み進める事が出来ました(写真大事!)。
駅員室の様子もとても現代的ですし(文章だけだと、やはりもっと質素で薄暗い感じ)・・・と書いて気がついたのですが、文章を読んで自分が想像する世界は全体的に薄暗いような気がします。
日本で言うと日本海的な暗さ。
頭の中の風景はまぶしくて原色!と言う世界ではなく、何となくグレーかかった暗めの雰囲気です。
育った環境が暗め、という訳ではないのですが・・・。
不思議です。
旅は海よりも山に行くことが多かったのですが、綺麗な青空!というよりは、木陰が多いと言う事が影響を与えているのかもしれません。
とにかく写真が沢山掲載されていたお陰で、美しいイタリアの村を思い浮かべながら読み進める事が出来ました。
☆☆☆☆☆
ノンフィクションですが何故村の人々が行商で本を売るようになったのか?そこにはどんな歴史的背景が隠れていたのか?
謎解きのようでドキドキしながら読み進めました。
印象に残った(というか好きな)文章は以下の部分です。
“「活版印刷といえば、十五世紀にモンテレッジォの北西にある山村で印刷所を開いた人がいたらしいのですよ」”
(中略)
“その村は、フィヴィツァーノという。検索しても、ごく簡単な情報しか見つからない。”
(中略)
“フィヴィッツァーノは、思ったよりも大きな村だった”
(中略)
“どういう因果でドイツからこの山村へ?と不思議がる私に、
「そういうあなたも、なぜ日本からこちらまで、ですわね」
と笑った。”
(中略)
“不思議な力に引かれてやってきた人がまた一人、ここにいる。”
身近にあると気づかず、疑問も持たず、調べようなんて探究心も湧かないものなのかもしれません。
村は閉鎖的ですし、身近であるがゆえに動く事が出来ない、という縛りもあるのかもしれません。
余所者だからこそ思い切って出来る事。
世の中意外と多いかもしれないな、と思いました。
☆☆☆☆☆
本を読む楽しみを、本を読む喜びを幼少期に与えてくれた両親に感謝です。
もちろん大人になってから、でも良いのですが、子どもの頃の感じ方と大人になってからの感じ方は異なりますので、幼少期の読書体験は貴重です。
☆☆☆☆☆
皆さまの明日も良い一日になりますように!!