新版
ロシア旅行
中央文庫
900円(税別)
☆☆☆☆☆
先日高山なおみさんの『ウズベスタン日記』を読んでから、本書を読みたくなりました。
なかなか販売していないだろうなぁ・・・と思いつつ、高山なおみさんの本を購入した書店に行ったところ、同じ棚に並んでいました。
関連書籍順に並んでいるなんて、何て素敵な本屋さんなのでしょう!
色川武彦氏の解説が良いとの感想があり、読むことが出来ずに残念だな・・・と思っていたら旧版の解説も確り掲載されていました。
素敵!!
色川武彦氏の解説は敬意と愛情が込められています。
解説まで読んで一冊の本という印象を持ちました。
☆☆☆☆☆
1969年の旅です。
「69年白夜祭とシルクロードの旅」
昭和44年6月10日出国。
7月4日帰国。
ソニーやセイコーなども出てくるので高度成長期の真っ只中です。
武田百合子氏は1925年生まれなので、44歳頃の旅です。
今から約50年前です。
半世紀前・・・そこまで古い話ではないような気がします。
ご主人の武田泰淳氏の本は読んだ事がありませんが、「もの食う女」のタイトルは聞いた事があります。
昭和53年2月から12月まで、雑誌『海』に連載され、本にまとめられました。
☆☆☆☆☆
この本でも吉祥寺がチラリと出てきました。
大らかな旅の記録です。
事業をされている方も多く参加されています。
時代背景的にも富裕層の集いの旅行だと思いますが、のびのびとしていて楽しい旅の記録です。
文化人の高尚な旅ではなく、無邪気な学生時代に戻ったような、親しい友人との旅です。
今は安価な値段(国内旅行のほうが贅沢な場合も多々有ります)で海外に行くことが出来る時代になりました。
なんて良い時代なのでしょう!
インターネットもつながり、世界の距離がぐっと縮まりました。
50年でこんなにも変化するものなのですね。
改めて旅は心躍る素晴らしいものだと思いました。
☆☆☆☆☆
武田百合子さん。
ご自身のことを“美人だなぁ、と思っているのかもしれない。”というような文章が度々出てくるので美人さんなのだろうなぁ・・・と思い写真を見たところ、やはり美人さんでした。
ご主人の武田泰淳氏は百合子さんの事を可愛くて大事にされていたのだろうなぁ、と思います。
武田泰淳氏は周囲から好かれる人のようで、旅行中見知らぬ人から物をもらったり、話かけられたり。
ツアーなので、旅行会社の添乗員と3人だけでなく、80歳を超えた(多分・・・年齢が出てきた気がするのですが・・・)老人銭高氏(ゼネコン銭高組の会長)等総勢10名の旅です。
百合子さんは銭高氏の事を好意的に見ています。
銭高氏が登場すると読んでいるこちらも嬉しくなりました。
銭高氏の建築物に関する興味と知識は流石プロ!です。
“「わし、いつからここにおるんやろ。なんでここにおるんやろ」”
・・・銭高老人のつぶやき、深いです。
“モスクワを発った飛行機の中から、主人は銭高老人になり代わっていた。早く銭高老人になり代わった人が勝ちだ”・・・この文章、笑いました。
旅の最後は「あぁ、いい気持ち」とご主人も一緒に旅した友人の竹内氏もご機嫌でお酒を飲んでいます。
楽しい旅の時間を共有させていただきました。
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3人は本当にお酒を良く飲まれます。
とても強いと思います。
以前ツアー旅行をした際に、毎食毎にお酒を楽しんでいるご家族一同を見て、お酒を(沢山)飲む事が出来る方が羨ましい!と思いました。
食事の時間も長くなりますし、楽しい時間になると思います。
(食事の時間はもともと楽しい時間なので、お酒が入るとさらに楽しくなりますね)
大人の楽しみ。
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楽しく、一気に読みました。
旧解説、新解説だけでなく、同行した竹内好氏(中国文学者)が1974年に書いたエッセイも掲載されています。
ご主人も同行の竹内さんもいない日々のなか、旅の思い出はキラキラと輝いています。
(武田泰淳氏 1912-1976、竹内好氏 1910-1977、武田百合子氏 1925-1993)
読後、満足した一冊です。
高山なおみさんが本書をかなり意識しながら『ウズベキスタン日記』を書いたのだという事もよく分かりました。
☆☆☆☆☆
ロシアにもウズベキスタンにも行ったことがないのでいつか行ってみたいです。
旅は本当に良いものです。
しみじみ。
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皆様の明日も良い一日になりますように!!